シリーズ紹介／AGING CANVAS「育てる帆布」
“ARTS&CRAFTS” は今年で16年目を迎えました。
今回はブランド立ち上げ当初から生産を続けている、”AGING CANVAS” (エイジングキャンバス) シリーズについてご紹介いたします。
（画像：BASIC TOTE ¥38,500）
僕自身、同シリーズの「BASIC TOTE」を愛用していますが、所持しているだけで気分が上がる、不思議な魅力を持ったバッグだと思っています。
シンプルで飽きのこないデザイン、内装ポケットの使いやすさや、肩に掛けられるハンドル。
実用性はもちろん素晴らしいのですが、「もの」としての圧倒的な存在感は、バッグというよりむしろ作品と言った方がいいような、、。無造作に部屋に置いてあってもサマになります。
ずっと同じ形を作り続けているというだけで十分安心感がありますが、スタッフとして、ブランドのファンとして、自信を持っておすすめできます。
それでは、一番の特徴である素材について掘り下げます。
（上：新品、下：数年使用のサンプル）
生地は年々退色を伴うのが普通ですが、同シリーズに使われる「6号タンニン帆布」は、年月と共に深みが増していきます。”AGING CANVAS” の名前の由来です。
染めに使われるタンニンとは、ポリフェノールと呼ばれる植物の免疫物質のことです。日本茶、紅茶、コーヒー、ワインなど、よく聞く身近なポリフェノール。皮をナメすのに使われることでも有名です。
タンニンは樹の皮にも多く含まれていているのですが、その粉をお湯に溶かして染めているのがこの生地です。繊維の中に残ったタンニンが、光や空気に反応して少しずつ色が変化していく仕組みです。
経年変化しやすい革とは異なり、長い時間をかけてゆっくりと育っていくため、変化を実感するまでには少し根気が必要かもしれません。その点でも「一生もの」としてご紹介したいのです。
（左：OLIVE、右：TAN）
“TAN” の色には「ミモザ」と「チェストナット（栗の木）」、”OLIVE” の色には「チェストナット」と数種類のパウダーを鉄媒染して使います。植物由来なので環境にも優しい染め方と言えます。
生地ができるまで
1.生機（キバタ）
ベースとなるのは綿100%の帆布です。帆布の聖地、岡山県倉敷児島の機屋さんで織られています。
大量生産に適した高速な織物機械ではなく、ビンテージデニムと同じ昔ながらの織機を使い、ゆっくりと織ることで重厚感のある雰囲気と高い強度に仕上がっています。
2.染め加工
京都東寺の近くにある60年続く町工場で、京都の豊富な地下水脈を利用して染めています。
タンニンの粉を染み込ませる作業は非常に手間がかかります。化学染料とは異なり、同じ工程で染めても同じ色になるわけではありません。ベテランの職人さんが、目指す色に均一になるまで何度も染めを繰り返します。
日本の丁寧な職人技が光る工程です。
3.洗い加工
最後は広島県福山市にあるジーンズを洗う工場で仕上げられます。
大きなドラム缶で洗うことで、タンニン樹脂で硬く板状になった生地を柔らかくして、独特のシワ感が出て使い込んだような「6号タンニン帆布」が出来上がります。
この工程でも、水温や洗う時間の調整など何度も試行錯誤を繰り返すことで、タンニン染めの風合いを最大限引き出しています。
レザーについて
同シリーズの全ての商品に、コードバンで有名なアメリカのホーウィン社で作られるクロームエクセルレザーを使っています。100年以上前から作り続けられる歴史ある革で、柔軟性・撥水性に優れている上、非常にタフなため長い間アウトドアブーツやワークブーツに用いられています。
縫製職人の技術
6号帆布とクロムエクセルレザー。これらの厚みある素材を縫うのは簡単ではありません。
「BASIC TOTE」について言えば、底面の角は生地や革が何重にも重なり合うことで、厚さが7.5mmほどに。
少し分かりづらくマニアックですが、職人の丁寧な仕事が感じられる部分ではないでしょうか。
“AGING CANVAS” シリーズは、デザイン、素材、縫製、その全てに携わる職人の技が集まった、まさにブランドの原点であるシリーズです。
昨年末に再入荷がありましたので、お選びいただける間にぜひチェックしてみてください。
STANDARD SUPPLY 二子玉川では、通常の展示はございませんが、お取り寄せにてご対応が可能です。ご希望などございましたらお気軽にお問い合わせください。
※当記事には投稿日時点の商品情報等を表記しております。最新の情報は各商品ページをご確認ください。
